注目の介護保険外サービス3選「介護マッチング、街の便利屋さん」新たな企業の参入も


 介護が必要な人と介護ヘルパーをマッチングさせるなど新たな介護保険「外」サービスが注目を集めている。公的な介護保険制度がいつまで続くか不安視される社会的背景から、独自の介護サービスを打ち出す企業が増えている。そこで、気になる3つのサービスをピックアップしてご紹介する。
介護保険「外」のサービスが続々と登場している(写真はイメージ/イチロウ提供)

介護保険外サービスに参入企業が続々

65才以上で介護が必要になると、要介護認定を受けることで公的な介護保険を利用してサービスを利用できるようになる。介護度にもよるが、実質1割負担(所得により2~3割)となり安く利用できる。しかし、今後、高齢者人口が増え続け、保険料を納める現役世代が減っていくことを考えると、介護保険制度がこのまま維持できるかが不安視されてもいる。

また、介護保険サービスには、介護度によっては受けられないサービスがあったり、利用時間が制限されたりと、さまざまな制約がある。
そこで注目なのが、介護保険“外”サービスだ。

介護保険外サービスは、全額自費負担となるが、サービスの幅も自由度も高く、最近は新たに参入する企業も増えている。

中でも、注目なのが、介護マッチングサービスだ。介護職を経験した若い経営者によるスタートアップ企業が新たなサービスを展開し始めている。どんなものなのか、サービス内容や利用法、料金を見ていこう。

1.イチロウ「急な依頼にも約2時間で対応」

電話やWebで相談し、ネット上で会員登録をすると必要に応じて、最適なヘルパーや介護士をマッチングして派遣してくれる。『イチロウ』を運営するのは、「介護をする人も受ける人も幸せな世の中をつくる」を理念とし、2017年に企業したLINK(リンク)。介護福祉士を経験した代表が「公的な介護保険制度への危機感」から、30才で創業したスタートアップ企業だ。

サービスは、24時間、365日利用することができ、最短5分で最適なヘルパーをマッチング、介護士の準備や移動時間を含め2時間後には派遣するというスピーディーさが魅力だ。

2019年2月のサービス開始から3年半で、マッチングした実績は1万人超という人気だ。初回無料のキャンペーン(※2022年10月現在)を利用して、まずはお試し体験をしてみるのもいいだろう。

訪問介護のほか、外出の付き添いなどもしてくれる(写真はイメージ/イチロウ提供)

■イチロウ https://ichirou.co.jp/
オーダーメイド介護サービス「イチロウ」

【サービス内容】

排泄介護・食事介助や歯磨き、ペットの散歩・買い物代行・外出付き添い、食事の調理、掃除、通院の付き添い(認知症の人も可)、病院代の立替えや薬の整理など、介護支援や生活支援(家事代行)まで幅広いオーダーメイドサービスを提供。

【利用方法】

介護依頼者が会員・依頼登録(登録時間約15分)→ケアパートナー(ヘルパー)をマッチング→ヘルパーを派遣→利用後に依頼者のもとにレポートが送られる。

Webアプリ・電話・メールのいずれかで簡単に依頼を予約ができ、直接のサービス以外は、オンラインのみで完結。

【料金】

・時間単価2900円×時間+交通費600円(東京・神奈川・千葉・埼玉)

・時間単価2800円×時間+交通費500円(愛知)

2.クラウドケア「24時間365日利用できる介護マッチングサービス」

『クラウドケア』は、介護が必要な人に、最適なヘルパーをマッチングして派遣してくれるサービス。クラウドケア(社名とサービス名は同じ)は、介護業界の人材不足などの社会的背景から、“介護の手を、正しくつなぐ”をモットーに2016年からサービスの提供をスタートした。

介護のスキルを持つ人材をニーズに合わせてマッチングするスキルシェア形式を介護分野にもいち早く導入したことで注目を集めた。また、最近では、上場企業の福利厚生プランにも提供が開始されている。

サービスの申し込みは、インターネット経由なので、時間を気にせず24時間365日、訪問介護や家事支援などを頼めるのが最大のメリットだ。現在、登録しているヘルパーは500人以上、最短1時間からでもサービスを使えるなど、介護保険サービスと違って自由度が高い点も支持されている。

高齢の母親の夜間見守りとおむつ交換を依頼した利用者からは、

「母親の深夜のトイレ介助で疲弊していました。母も私も特に深夜が不安で辛くなるので、クラウドケアのヘルパーさんがいて助かっています。うつ状態でふさぎ込んでいた母が元気になってきました」という声も寄せられているという。

新たに訪問音楽サービスも開始

同社は、2022年7月に新たに専門の企業と提携し、脳卒中後の後遺症のための訪問リハビリや訪問音楽サービスも開始し、独自性を打ち出している。
懐かしい童謡や流行歌などを歌い、思い出話にも花を咲かせます(写真提供/リリムジカ)

クラウドケアの訪問音楽サービスを手がけているのは、介護施設や病院などで参加型音楽プログラムを実施しているリリムジカだ。同社代表で音楽療法士の柴田萌さんによると、

「懐かしい音楽を聞いたり歌ったりすることは記憶や感情の刺激になり、発声は嚥下機能の維持も期待ができます。

そして、音楽と会話を通してコミュニケーションが促進されることで、その方らしいより豊かな生活を送ることにつながると考えています」とのことだ。

■クラウドケア https://www.crowdcare.jp/
介護のマッチングサービス「クラウドケア」

【サービス内容】

・訪問介護・家事・生活支援などのサービスを有償提供。認知症の人の病院付き添いも可。派遣まで最短1時間で対応する。

・泊まりこみや、一泊二日の旅行の付き添いなど、12時間を超える依頼や通常サービス以外も相談できる。

・訪問リハビリや訪問音楽サービス(別途料金)

【利用方法】

ネットで会員(依頼者)登録→会員ページから依頼内容・支払い方法・希望日時を入力。見積もり金額を確認の上、申し込み→最適なヘルパーをマッチング→担当ヘルパー決定後、依頼者にメールで連絡が入る→案内に沿って期日までに支払いを済ませる。

当日までメッセージ機能で、ヘルパーと直接やりとりができるので、詳細の打ち合わせができるのも安心だ。利用後はヘルパーの評価もできるので、質の向上にもつながっている。

【料金】

・訪問介護・家事・生活支援サービス:1時間あたり2750円~3300円(交通費別)

・買い物お助けサービス(買い物代行):1か所あたり550円(交通費別)

・訪問音楽サービス:初回お試し:1時間9900円+交通費880円~

 

3.あなたの街のノッポさん:地域に根ざした街の便利屋さん的存在

愛知県を中心にデイサービスや介護相談等のサービスを行っているクレセント代表の瀬口雄一郎さんは、愛称「介護の熱弁家ノッポさん」として、さまざまな介護保険外サービスを考案している。介護相談や生活支援をしてくれる「あなたの街のノッポさん」もそのひとつだ。

問い合わせの多い手すりの設置などのリフォームは、介護保険が適用されるものもあるが、介護保険外サービスとして、病院の付き添い・引っ越し・掃除・遺品整理などニーズに合わせて細かく対応している。
介護の熱弁家ノッポさんこと、瀬口雄一郎さん(51才)。講演活動のほか、YouTubeなどでも情報を発信している。デイサービスに通えなくなった利用者さんの自宅にも訪問するなど、きめ細やかなケアも

母親の介護を経験した瀬口さんは、「できる限り最期まで自宅で生活をしたい」という母の言葉で、デイサービスを運営するきっかけになったという。2013年からデイサービスを始めてみると、利用者さんやご家族からさまざまな相談が持ちかけられたため、介護の便利屋のような存在が必要だと感じ、「あなた街のノッポさん」のサービスを開始した。

介護保険に頼らない環境や体づくりを!

瀬口さんは、介護保険外サービスのほかにも、ユニークな取り組みをしている。

「私自身、介護保険には限界に近づいていると考えています。将来的には、介護認定を受けること自体も難しくなっていくのではないでしょうか。そこで大切なのは、公的な介護保険サービスに頼らないように、心身の健康を保つことだと思うんです。

現在、地域の行政から依頼を受け、65才以上の方を対象に認知症予防セミナーや体操指導を行っています。
65才以上の方々に対して認知症予防セミナーや体操を行う。直接触れ合う地域活動こそが、本当に必要なニーズを引き出すという

今後は、シニア世代の健康維持への意識を高め、認知症や要介護にならないための予防法などの学べる場をつくりたいと思っています。国や行政だけではなく、民間や地域社会の皆でタッグを組んで、長寿時代の日本の将来を明るくしたいですね」と、瀬口さんは熱く語る。

■「あなたの街のノッポさん」https://nopposan-town.jp/
地域の介護を守る「あなたの街のノッポさん」

【サービス内容・料金】

・介護保険内のサービスは、「手すりの達人」として介護保険適用者に対して上限20万円の介護リフォーム。

・介護保険外のサービスは、暮らしの中の困りごと相談・解決の全般。実績として引っ越し・掃除・財産管理・遺品整理・免許返納の手伝い・自動車の転売や廃棄・旅行などがある。

※相談ごとに応じて料金は異なる。

【利用方法】

「あなたの街のノッポさん」HPの問い合わせフォームでまずは相談を。

※相談に応じ、サービス地域は限られます。

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介護状態になっても住み慣れた地域や自宅で暮らすためには、介護保険内、介護保険外の介護サービスをうまく使い分けて利用すること。そしてなるべく介護状態にならないよう自助努力を続けることが大切と感じた。